バングラデシュにおけるPCV10ワクチンの肺炎球菌感染症への影響

肺炎球菌は、子供に重い病気を引き起こすばい菌で、肺炎や敗血症、髄膜炎などを引き起こす。2016年には、約4500万人の子供が重い肺炎球菌感染にかかり、5歳未満で約35万人が亡くなった。バングラデシュでは、毎年約2万1000人の子供がこの病気で亡くなっている。これに対抗するため、2000年に子供向けのワクチンが登場。世界保健機関（WHO）は、2006年から子供向けの特定の肺炎球菌ワクチンを推奨した。しかし、これらのワクチンが貧しい地域でどれだけ効果的かの情報はまだ不足している。

#背景

最初の肺炎球菌ワクチン、PCV7は裕福な国で導入され、子供の重症例を減少させる良い結果を示した。しかし、ワクチンがカバーしていない新しい株が現れ、全体的な効果が低下した。そのため、WHOは、さまざまな地域でのワクチンの効果を継続的に監視するよう呼びかけた。

バングラデシュでは、肺炎球菌感染がどのように人口に影響を与えるかを理解するために、2004年からデータ収集が始まった。この研究は、子供の健康が特に注視されている田舎のミルザプール地域に焦点を当てている。2015年3月、政府は新しい肺炎球菌ワクチン（PCV10）を導入し、子供が特定の年齢で3回接種する必要があった。

#研究の目的

この研究は、PCV10導入前後で重症肺炎球菌感染に対するワクチンの影響を比較することを目指した。特に2歳未満の子供に焦点を当てて、2つの主な点を調べた。まず、侵襲性肺炎球菌感染（IPD）の確認された症例の数がどのように変化したか、第二に、医者が診断した重症肺炎の症例数がどう変わったかを知りたかった。

#研究方法

これらの目標を達成するために、研究者は2つの主なアプローチを採用した：

1. ワクチン導入前後の肺炎球菌感染の疑いのある症例を調べる前後研究。
2. ワクチンが特定の肺炎球菌タイプに対してどれほど効果的かを4つの異なる医療サイトで評価する間接コホート研究。

#研究地域と人口

研究は、バングラデシュの約40万人が住む田舎のミルザプールで行われた。クムディニ女子医科大学病院（KWMCH）がこのコミュニティの主な病院で、健康管理者が週に一度子供の健康をチェックしていた。病気の兆候が見られた子供は、治療のために病院に行くことができた。

#病気の定義

研究では、特定の症状に基づいていくつかの病気を定義した：

• 肺炎: 咳や呼吸困難のある子供。
• 重症肺炎: 胸の引き込みや飲み込みができないなど、さらに危険な兆候を伴うより深刻なケース。
• 髄膜炎: 突然の発熱と首の硬直を伴う症状。
• 敗血症: 無気力や持続的な嘔吐などの症状を伴う重篤な状態。

これらの病気の症状が見られる子供は、血液や脊髄液中の肺炎球菌をテストされた。

#ワクチンの効果

PCV10の効果を測定するために、研究者はワクチンタイプのIPDを持つ子供と非ワクチンタイプのIPDを持つ子供のワクチン接種状況を比較した。異なる回数のワクチン接種を受けた子供たちを調べて、ワクチンがどれほど効果的だったかを見た。

#検査室のテスト

医者は、肺炎球菌を確かめるために子供から血液と脊髄液のサンプルを集めた。これらのサンプルは、ばい菌の存在を確かめて、その種類を特定するためにいくつかの検査室でテストされた。

#統計分析

研究者は統計ツールを使って結果を分析した。ワクチン導入前後の病気の症例数を比較し、さまざまな要因を考慮して精度を確保した。

#倫理

研究は倫理的ガイドラインに従って行われた。研究に参加する前に、親からインフォームドコンセントを得て健康情報を収集した。

#研究の結果

7年間で研究者は、ワクチン導入前の約3400人と導入後の約16800人を含む2万人以上の子供を調査した。疑わしい肺炎、重症肺炎、その他の関連する病気に関するデータが収集された。

ワクチン導入前には、わずか数人の子供が肺炎球菌感染に陽性反応を示した。ワクチン導入後も多くの子供がテストされたが、症例数は低いままだった。

子供の侵襲性肺炎球菌感染率は大幅に減少し、ワクチンタイプに関連する症例は約77%減少した。しかし、これは統計的には有意ではなく、結果は変動する可能性がある。全体的な肺炎球菌感染の減少率は約25%だった。

重症肺炎の発生率も、ワクチン導入後に顕著な減少を示し、重症肺炎の症例数は54%減少し、これは有意だった。

#結論

この研究は、バングラデシュの田舎でPCV10ワクチンの導入が若い子供の深刻な肺炎球菌感染を減少させるポジティブな影響を持つことを示した。結果は、他の国でもワクチン導入後に類似の病気の減少が見られたことと一致している。

しかし、ワクチンタイプの症例数は大幅に減少した一方で、非ワクチンタイプによる症例は増加していた。これにより、ワクチンの効果を継続的に監視し評価することが重要だということがわかる。

検出された症例数が少ないことや、一部の病気の測定が難しいといった制約があるものの、この研究は重症肺炎などから子供を守るワクチンの重要性を強調している。今後の監視は、継続的な影響を理解し、ワクチン戦略の更新が必要であることを示すために重要になる。

結果は、似たようなプログラムをまだ導入していない他の国で効果的なワクチンの使用を促すものである。より多くの子供がこれらの命を救うワクチンを受けることで、命を救い、予防可能な病気の負担を減らすことができる。

全体として、PCV10ワクチンはバングラデシュの子供の健康改善に期待が持てるもので、肺炎球菌感染症との戦いにおけるさらなる進展の希望を提供している。