高エネルギー物理学におけるソフトウェア貢献の認識

高エネルギー物理学（HEP）の分野では、ソフトウェアが研究において重要な役割を果たしてる。科学的な作業の副産物として作られることが多く、実験やデータ解析に必要不可欠なんだけど、ソフトウェアは伝統的な研究成果、たとえばジャーナル記事やデータセットと同じくらい注目されるわけではないんだ。2022年11月に、HEPにおけるソフトウェアの引用方法を議論し、ソフトウェアの貢献に適切なクレジットを与える方法を探るためのワークショップが開かれた。

#研究におけるソフトウェアの重要性

HEPにおけるソフトウェアは、研究者たちが頼りにしている大切な資産だ。シミュレーションやデータ分析、その他重要な作業で使われてる。ただ、その重要性にもかかわらず、ソフトウェアが他の研究成果と比べてどう扱われるかにはギャップがある。この不一致によって、ソフトウェアを開発・維持するためにかかる労力が十分に評価されないことがある。

#ワークショップの目的

ワークショップの目的は、さまざまな関係者が集まり、HEPにおけるソフトウェアの引用慣行を進化させる方法を議論することだった。HEPの実験、ソフトウェア開発コミュニティ、科学出版社、引用のためのツールやリソースを提供している人たちの代表が参加した。参加者は、現在の慣行やソフトウェアの引用を改善するための将来の推奨事項について体験を共有した。

#HEP実験における現在の慣行

HEPには、ATLAS、CMS、LHCbの3つの主要な実験がある。それぞれが自分たちの研究に使用するソフトウェアの引用方法を独自に発展させてきた。

#ATLASの慣行

ATLASはソフトウェアの引用に幅広いアプローチを取っている。一般的な声明を引用することが多く、ATLASのソフトウェア全体をカバーし、コードが見つかるリポジトリへのリンクも提供している。特定のツール、例えば検出器シミュレーションソフトウェアやモンテカルロジェネレーターについては、特定のソフトウェア論文も参照している。

でも、ATLASは統計分析に使うソフトウェアを常に引用しているわけではなく、代わりに方法を説明している論文に焦点を当てている。この不一致は、すべてのソフトウェアの貢献が認識されない結果につながっているが、重要なライブラリについての引用を増やし始めている。

#CMSの慣行

CMSはソフトウェアの引用に関してより一貫した文化を持っていて、特にモンテカルロジェネレーターや機械学習ツールについては認識がある。自分たちのソフトウェアの引用を内部文書や出版物で改善する必要性を感じている。CMSは、ソフトウェアに焦点を当てた研究論文を発表することにも興味を持っていて、これが視認性や引用慣行を高めると考えている。

#LHCbの慣行

LHCbはソフトウェアの引用を奨励するために積極的なステップを踏んでいる。前回の会議からの推奨に基づいて、研究でよく使われるソフトウェアの引用用テンプレートを開発した。分析チームはこのテンプレートにソフトウェアの引用を記入することが奨励されているが、必須ではない。このコミュニティの規範への依存は、ソフトウェアの引用慣行に関するより明確なガイドラインの必要性を強調している。

#ソフトウェアプロジェクトからの視点

HEPコミュニティ内のさまざまなソフトウェアプロジェクトは引用について異なる見解を持っている。たとえば、ROOTチームはソフトウェアの引用を優先しておらず、現在の引用慣行が大規模なプロジェクトにはうまく機能していると考えている。引用情報の維持に必要な追加の労力について懸念を示している。

対照的に、Scikit-HEPコミュニティはソフトウェアの引用を重視していて、より広範な科学的基準に沿った努力をしている。彼らは開発者からの貢献を正しく評価することを促進したいと考えていて、ユーザーがソフトウェアを正しく引用するのを助ける明確なガイドラインを評価している。

モンテカルロシミュレーションに焦点を当てたMCnetコミュニティは、LHC実験間での一貫した引用慣行の恩恵を受けている。彼らは明確なガイドラインを確立し、ソフトウェア内に引用情報を直接提供している。ただし、大規模なソフトウェアリリースに関する論文を引用するモデルには、継続的なメンテナンスや開発の努力が十分に認識されないという懸念がある。

#出版コミュニティからの洞察

出版コミュニティからの意見もソフトウェア引用慣行を改善するためには重要だ。INSPIREはHEP内の出版情報を管理する重要なプレイヤーで、ソフトウェア引用を記録に組み込む作業を進めている。これにより、研究者がソフトウェアを見つけて参照しやすくなる。

Elsevierは、科学コミュニティがソフトウェア引用の基準に合意する必要性を強調している。一度基準が確立されれば、これらのガイドラインはジャーナルの編集者や査読者がソフトウェアの引用を適切に扱うのに役立つ。

Journal of Open Source Software（JOSS）は、高品質な研究ソフトウェアの引用を支援し、伝統的な出版慣行とソフトウェア引用のギャップを埋めることを目指している。HEPコミュニティが採用できる有用なガイドラインを提供できる。

#ベストプラクティスの推奨事項

ワークショップからの議論を基に、HEPにおけるソフトウェア引用を改善するためのいくつかの推奨事項が浮かび上がった。

#明確なドキュメンテーション

ソフトウェアプロジェクトは、自分たちを引用する方法について明確でアクセスしやすいドキュメンテーションを提供すべきだ。この情報はリポジトリや公開ドキュメントサイトに目立つように配置し、ユーザーが引用ガイドラインを簡単に見つけられるようにする。

#標準化されたフォーマットの使用

引用の標準化フォーマット、例えばCitation File Format（CFF）を採用することで、ソフトウェアの引用がどのように扱われるかを合理化できる。CFFファイルは人間にも機械にも読みやすく、GitHubやZenodoなどのサービスと簡単に統合できるから、ソフトウェアプロジェクトにとって実用的な選択肢だ。

#バージョン管理

引用にバージョン情報を含めることが重要。これによって他の人が特定の研究に使用されたソフトウェアのバージョンを特定できる。バージョン管理を維持し、変更を文書化することで、研究者は出版物における正確な帰属を保証できる。

#分野全体での一貫した慣行

異なる実験やソフトウェアコミュニティが引用を異なる方法で行うかもしれないが、ソフトウェアの引用慣行に関する合意を確立することが重要だ。HEPコミュニティは、研究におけるソフトウェアの重要性を認識し、より良い引用習慣を促進するために一般に受け入れられた慣行に合意しなければならない。

#結論

ソフトウェアが高エネルギー物理学の研究において不可欠な役割を果たし続ける中で、コミュニティがソフトウェア引用に関する理解と慣行を進化させることが重要だ。ソフトウェアを正当な研究成果として認識し、明確なガイドラインを提供し、標準化された慣行を採用することで、HEPコミュニティはソフトウェア開発者の貢献にふさわしい評価を確保できる。

最近のワークショップでの議論から得られた進展は、ソフトウェア引用慣行を改善するための道筋を提供する。課題は残っているけれど、コミュニティ内でソフトウェアの研究プロセスにおける認識を高め、より効果的な引用基準を開発するための共有の取り組みがある。